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EXHIBITION

​上田義彦写真展「いつでも夢を」

 東京代官山のアートギャラリー gallery ON THE HILL(代官山ヒルサイドテラス内)では、2023年7月26日(水)から8月13日(日)まで、 サントリーウーロン茶の広告写真を手掛けた写真家の上田義彦による個展「いつでも夢を」を開催しました。同時期に、同タイトルの写真集(345作品収録)が赤々舎から出版され、小山登美夫ギャラリー六本木では上田義彦展が同時開催されました。

 24歳の時に「流行通信」でデビューして以来、40年もの歳月をかけて様々な被写体と向き合い続ける上田義彦。神聖な森や川、自身の家族、ポートレイト、建築など、主題の多様さと表現領域の広さが上田作品の特徴です。長年、愛機であるディアドルフ8×10(エイトバイテン)の大型カメラを携えて世界中を旅し、自身の中にふと湧き上がる強い印象を写真という媒体に封じ込めてきました。また、アート作品の制作と並行して広告制作にも精力的に取り組み、広告写真という枠組みの中でも自身の表現を模索しています。若き日の上田と制作を共にしたアートディレクターは、なかなかシャッターを切らない写真家だったと撮影時のエピソードを語ります。被写体との睨めっこを交わしながら培った頑固な眼は、アートと広告の垣根をも超越した瞬間を視つめているようです。


 本展覧会は、上田の代表作であり、今なお後世に語り継がれる広告写真でもあるサントリーウーロン茶の作品シリーズをご紹介します。本作はサントリーの宣伝部をはじめ、コピーライターの安藤隆氏やアートディレクターの葛⻄薫氏、そして、この広告にかかわった多くのスタッフの方々と共に制作されました。1990年から2011年までの約20年間、南は海南島から北はハルビンへとロケ地を求めて中国各地を巡った旅の記録であり、撮影が1990年に始まったことから、変容していく中国を写し出す歴史の記録とも言えるでしょう。
 上田は当時の中国の風景を「遥か感」という言葉で表現しています。広大な地にぼんやりと霞んだ空気の層が漂う独特な眺めと、その時代を生きる人々の人間模様や美しい風景がインスピレーションとなり、サントリーウーロン茶の数々の名シーンが生み出されました。多彩な表現の中には、ロケを進める中で偶発的に遭遇した光景や情景なども含まれており、旅を重ねることで膨らんでいく、ワクワクとした上田の穏やかな喜びが写真に鮮明に焼き付けられています。

 本展のタイトルは 、上⽥が初期に撮影を手掛けはじめた頃のサントリーウーロン茶のCMで使った名曲「いつでも夢を」 のタイトルをそのまま引⽤。昭和30年代後半の日本で流れたこの曲と同じように、どこか懐かしいサントリーウーロン茶シリーズに添えられたタイトルには、複雑で変化の激しい時代を眺める上田の想いが込められています。会場に散りばめられた物語の断片群は、ファインダーから覗く上田の眼差しがシンプルに開かれているからこそ、いつでも夢を捉えていけるのだと教えてくれるでしょう。

 会場では 広告写真として 8×10カメラで撮影された作品と共に、上田がロケの合間に35mmフィルムカメラで撮影したスナップを展示販売。自身で現像を行う上田は、写真そのものが持つ美しさを実験的な額装で体現させました。 

Category: Exhibition

Date: Jul. 26 to Aug. 13, 2023

Venue: galley ON THE HILL(HILLSIDE FORUM)

Creation: Yoshihiko Ueda

Organize: ON THE HILL Association

Exhibition cooperation: Suntory Holdings Limited,

Suntory Beverage & Food Limited,  SUN-AD Company Limited
 

Art Direction: Kaoru Kasai

Photograph:  Noritoshi Kuroki

Gallery Talk: Yoshihiko Ueda, Takashi Ando, Kaoru Kasai 

 

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